生きることに絶望した若者が世界で一番高い崖の上にやってきた。500年生きた桜の老木が若者に話しかける。
昨今、学校、仕事での悩みから若者が、自殺を選択する
というニュースを耳にします。
それが、この作品を創る契機となりました。
自分はなんのためにうまれてきたのか?
なんのために生きているのか?
だれしも一度は、思いを巡らせたことがあると思います。
私もその一人ですが、自分なりに、書物において、宗教において、
探してみましたが、腑に落ちる答えに行き当たりませんでした。
自分の人生において、その答えに行き当たったというより、むしろ、答えがないという答えに行き当ったということでしょうか。もっとシンプルに、生きることへのさまざまな思いをそぎ落としていけば、その疑問から解き放たれるのではないかということかもしれません。
この絵本は、読み手に対して道を説くような書き方をしていないつもりです。むしろ、自分に言い聞かせるものでもあります。桜の樹は、私自身であり、若者も私自身であるのです。
この作品が、若者を生き続ける選択に導くことができたとしたならば、読んでいただける方々が生きることに対して再認識するきっかけになったのであれば、この作品を世に送り出した意義があったと思えますし、著者としてこのうえなく嬉しいことです。
中川 栄二